研究室にSlackを導入した話(安定運用まで)
予想外だったことが二つある。一つはコロナ禍が一年経っても終息していないこと。もう一つは一年経っても記事の後編を書かなかったこと。
この記事では導入後の状況について説明する。導入までについてはこちら。
読むにあたって、私の所属する研究室はプログラミングに関する研究分野を扱っており、研究を進める上で在宅ワークが十分に可能であったことを前提として欲しい。
使用状況と有料プランへの移行に関して
当初こそメール感覚で使ってしまい、あいさつや署名をいちいち入れる学生こそ存在したが、だんだんと慣れていき雰囲気も1か月ほどでフランクになった。
しかしながら使用率に関してはチャンネルごとに大きな格差が存在している。研究班ごとや学年ごとのチャンネルを設置しているものの、ある班(or学年)では活発な議論が、ある班(or学年)は閑古鳥が鳴く。共通するのはアクティブなユーザーの存在で、チャンネルに誰かひとりそういった学生が存在するとそれに影響されて使用率が上がるようだ。
全体的な使用率は予想を大きく上回り、ワークスペースの開設からおよそ2か月半で投稿メッセージは10000件を突破した。
ラボSlack、導入から2ヶ月と1週間経つ。 pic.twitter.com/oe61WVIlly
— 豆腐さんど (@tohu_sand) 2020年6月21日
無料プランのSlackはメッセージが10000件を上回った場合、上回った分の過去のメッセージが検索できなくなる(実質的に見られなくなる)という仕様であり、これを防ぐためには課金が必要だ。利用者一人当たり850円/月*1を支払う必要があり、仮に20人の研究室であれば年間20万円超、なかなか気軽に支払えるものではない。
研究費による課金に関しては諦めるつもりだったが、なんと指導教員が学割制度を教えてくれた。割引率は驚異の85%*2、上記のケースでも支払いは3万円強となる。これは大きい。指導教員も課金に対して好意的であり、大変ありがたいことにラボのSlackは運用開始2か月ほどでプロプランへ移行した。
導入後に追加されたチャンネル
導入後にも教員や学生によっていくつかのチャンネルが追加された。
- webミーティングや共有ドライブのリンクが張られるchannel (#links)
- 研究室への入室申請をするchannel (#entrance_management)
- 分からないことがあったときの質疑応答用のchannel (#question)
私は特に#questionの運用が好きだ。回答者は質問メッセージに対してスレッドで返信をするようにしており、見た目がすっきりしている。また、解決した質問には「解決済み」emojiをつけることで区別をつけている。
このように便利なチャンネルが増え、かといって乱立が起こっているわけでもないことは大変うれしく思っている。
問題① 従来ツールの代替たり得ているのか
もともとメーリングリストやLINEをまとめて代替するツールとして導入したつもりだったが、完全に移行しきったとは言えない。 自分の場合、学生や指導教員とのやり取りはほとんどSlackのDMで行うようになったが必ずしも全員がそうではない。例えば元々あったLINEグループから移行する手間や、プライベートチャンネルを原則禁止していること(前回記事参照)、外部からのメールを転送する場合の手間などが原因であるようだ。
「Slackの通知が来るのが嫌」という意見もあった。こうなってくると個人の感覚や性分の問題となるので、無理に使わせるような試みは行っていない。もともと他人に何かを強制するのは苦手だ。
問題② 連絡や通知に対する感覚
学生が「チャットツール」の感覚になれるのにも時間がかかった。メッセージに対してemojiで返答するのに強い抵抗を示す先輩もいた。悩んでいたが、指導教員がemojiを多用してくれるおかげで最近はあまり問題にならなくなった。時間と慣れは様々な問題を解決してくれる。
深夜にメッセージを送信するのをためらう人はいまだに多い。「Slackは通知に時間帯設定ができるから、夜に通知が来て迷惑に感じてもそれは受信者側に非がある。したがって夜にメッセージを送っても失礼に当たらない」という考えを浸透させたいけれどこれは中々難しい。
学生の中には極端に連絡が取りづらくなったケースもあった。学生はPCのブラウザ、PCのアプリ、もしくはスマホのアプリを利用して平日の日中は通知を受け取れるようにする人が多いと思うのだが、どうやら数日に一回PCのブラウザを開いて確認するだけの人もいるようだ。こうなってくると個人の感覚や性分(略)。
問題③ 卒業した学生に関して
昨年度の3月には数人の学生が卒業・修了したため、彼らのアカウントをどうするか考える機会があった。連絡を取る手段は残しておきたいが、卒業生のアカウントをワークスペースに残した場合、その分の料金を支払う必要がある。結局、卒業生は4月以降Slackのアクティブユーザーの判定を受けなくなったために放置されている。
ちなみに、Slackのシングルチャンネルゲストは非アクティブユーザー扱いとなるため、料金がかからない。したがって#graduatesのようなchannelを作り、卒業生をシングルチャンネルゲストとして残す案もあった。
終わりに
現在のラボのSlackの運用は完全にうまく行っているとは言えない。メッセージの45% がパブリックチャンネル、55%がダイレクトメッセージへの投稿であり、情報の共有度もイマイチだ。けれども論文など軽めのファイル転送はSlackを通じて行われるようになったし、なにより私は9割5分ほどの連絡がSlackで来るようになった。
研究室では、コロナ禍終息後も元に戻すことなくワークスペースの運用を続けていく予定となっており、取り組んだ甲斐はあったと思う。